辛夷第二幕感想⑤明日の私は今日より綺麗
辛夷第二幕の感想シリーズも最後です。最後の曲は浜浦彩乃ちゃんメインの「明日の私は今日より綺麗」。これを聴いてこぶしのセンターはやっぱり浜ちゃんだなあと思いました。
曲全体について
作詞作曲は中島卓偉さんです。こぶしメンは「やっと卓偉さんに曲をもらえた!」と言っていたので、「開き直っちゃえ!」よりもこっちの方が先にメンバーに公開されたんだろうか。
卓偉さんといえば解放感あふれる曲構成が魅力の一つでありますが、「明日の私は~」では、1番2番それぞれにその構造がとられているだけではなく、曲全体でもどんどん広がりを持たせていっているところがいいな~と思います。
1番はバックの演奏が非常にシンプルで、1番終わりからどんどん楽器が増えていく構成。縦にも横にも広がり、ラストへ向かいます。
あと卓偉がうるさくていい(褒め言葉)。
歌詞について
卓偉さんはアイドルに曲を提供することについて、今年ライブで言及していました。意訳するとアイドルにはどうしても期限があるから、限られた音楽人生でいい曲に触れなければ、楽曲提供側も責任もっていい曲を与えなければいけないという内容で、その考えが「明日の私は~」にも表れているなあと思います。
子どもでも大人でもない狭間の年代であるこぶしちゃんたちに、その不安も肯定しながら夢を追いかけることの素晴らしさを語るやさしさに泣いちゃう。
こぶしファクトリーといえば辛くても立ち向かって頑張ろうと「剛」の強さを見せる曲が持ち味でしたが、「明日の私は~」ではしなやかでやわらかい強さを感じられます。
5月の単独ホールコンサートでは、「こぶし第一章の終わり」とも言われていましたが、この曲を聴いてまだまだこぶしファクトリーの道は先に続いているんだと思いました。まさに「辛夷第二幕」です。
涙が出るほどに美しくきれいな歌詞ですが、そのまっすぐさが浜浦彩乃というアイドルに本当にぴったり。
歌唱表現その他こと
辛夷第二幕ではメンバーがさまざまな表現に挑戦していますが、「明日の私は~」では「楽に響かせる」ことに苦戦したメンバーが多いのではと思います。他の曲でも触れましたが、楽に、語るように歌うってとても技術と訓練が必要です。(菅井ちゃんのレッスンでよく見るやつです)それをしっかり声を張って歌声を通すことをがんばってきた浜ちゃんメイン曲でやるのに意義がありますよね。
浜ちゃんの声は良くも悪くも他のメンバーと混ざりにくく(実音が多い)、だからこそアカペラではメインボーカルなんでしょうが、下手に聴こえやすいという面があります。そこも個性として受け入れるのは精神的にもハードルが高いことですが、この曲で浜ちゃんがふっきれた部分もあるんじゃないかなあ。だといいな。印象に残る声ってそれだけでアイドルとしては武器ですから、元々の声を好きでいてくれたら…と思います。
この曲ではコーラスが多めに入っていますが、アカペラで学んできたことが存分に生かされていて、歌詞の「これまでのすべては無駄じゃなかった」など重なる部分がありますよね。はあ、すごいよこぶしちゃん……。
メンバーが楽に歌うことが重視されているであろうこの曲は、だからこそメンバーが元から持つ声質や歌い方を十分楽しむことができます。浜ちゃんはまっすぐ、さこちゃんはしゃくり、のむちゃんは自然なビブラート、あやぱんは透明感あふれる高音フェイク、れいちゃんは深みのある少年のような声。いま誰が歌っているのかわかりやすく、しかしコーラスは他のメンバーを引き立てて…と、メンバーの自然な歌唱力の高さを楽しめる曲です。
メンバーそれぞれのソロパートもいいですが、組み合わせの楽しさも見られ、聴くほどに好きになれちゃう。本当にいい曲をもらったなと思います。
今年は他グループも書ききれないほどいい楽曲が多数発表され、例年よりも「新曲プレイリスト」が潤っていたように感じます。大晦日の夜の時点でまだこぶし2020春ツアー情報が出てないんですけど、ホールコン発表前も現場なかったので、なにかいいことの前兆としてオタクは元気に2019年を締めようと思います。