積立タイムリー

好きな言葉「三食おやつ昼寝つき」

辛夷第二幕感想④アンラッキーの事情

辛夷第二幕の感想も半分を過ぎまして、和田桜子さんメインの「アンラッキーの事情」です。

 

今回のアルバム新曲で一、二を争うくらいに好きな曲です!失恋ソングですが、桜子さんの持ち味であるウェッティ感がすごく出ているな~と思います。

 

曲全体について

歌詞は失恋ソングということで湿度が高くなっていますが、曲構成としてはこぶしの中でも「踊る曲」になっています。緩急のコントラストが鮮やかで、さこが秘める激情を感じられますが、後ろのストリングスなどが悲恋も表現しています。

 

メンバーの歌唱も意識的に緩急をつけようとしているんじゃないかな~。作曲・編曲はカントリーで「待てないアフターファイブ」を提供している石井健太郎さんだそうです。

歌詞について

作詞はハロプロで多数提供のある井筒日美さんです。2019年の新曲ではアンジュルムの「私を創るのは私」、つばきの「ふわり、恋時計」などがありますよね。こぶしでは「これからだ!」で直接対談もしています。こぶしに楽曲提供するにあたって誰がメインとか伝わっていたのかな~。

 

歌詞は失恋したばかりの女の子が主人公ですが、年は高校生~大学生くらいですかね。2番で

嬉しさ、楽しさの感情

昨日に置き忘れたの

 とあるので、まさに昨日失恋したのかな。

 

素直に時系列をつくると

失恋→2番→1番

でないといろいろ成立しなくない?とも思うのですが、「あんなわからず屋な君」「二人だって孤独だった」ともあるので、もしかしたら決定的に別れる前からなんだかうまくいかなくてバイトでミスが重なって…とかであれば

失恋→1番→2番

になるでしょう。むしろそのほうが自然に聴けるかな。

 

簡単にいうと失恋から立ち直りたい女の子の曲なんですけど、それをベタなくらいじっとりと描いているところが好きです。

 

1番ではただひたすらに悲しみに暮れている姿が描かれていますが、やけにリアル(笑)悲しいときって五感すべてが悲しいし、明るいものを見ても余計に悲しくなるんですよね。

 

風が耳を掠めるだけで元彼を思い出すし、そうなればもしかしたら…と周りをつい探してしまうし、似てる人がやけに目に入る。忘れたい忘れたいと思うほどに色濃く思い出してしまうものです。(まさにアンラッキーの自乗ですね)

 

自由に飛び回る鳥にさえムカついているところがガチでいいです…。まだまだ忘れられないところで1番が終わります。

 

2番は彼と別れたことで空白になってしまった予定を友達が埋めてくれているシーンから始まります。でも別れたばっかりって友達が励ましてくれていてもいまいち頭に入ってこないんですよね。時間が経つのも遅く、友達のことは好きなのにうまく笑えず、ますます苦しくなってしまう。

 

でもサビあたりでちょっとずつ前に進む姿勢が見えてきますよね。1番ではそうするべきだよねと一般論で「断ち切って」と言っている感じでしたが、2番では自分で自分に言い聞かせている印象を受けます。

 

落ちサビからは曲の盛り上げや歌い分けの効果もあり、立ち直りが近いんじゃないかな~と思わせてくれます。このへんは歌唱表現のところで詳しく書きます。

 

個人的に刺さったのは「二人だって孤独だった」という歌詞で、主人公はたぶん付き合っていてもそんなに幸せではなかったんじゃないかと思う(笑)

 

付き合っていてもあんまり大事にしてもらえていなくて「二人だって孤独」を感じていても、でも一人でいるよりは寂しくない。彼がいなくなるとますます孤独に感じて探してしまう…。

受け身じゃない生き方がいい

 とありますが、彼に流されたり、言いたいことを我慢したりして付き合っていたのかな~。

 

この「二人だって孤独だった」は大サビで出てくるフレーズですが、ある程度自分を客観視できるようにならないと出てこない感情なんですよね。主人公はこの先やりたいことをやりたいようにできる自分に…!と進んでいきそう。

 

ただ失恋から立ち直るときはこう思っていてもまた恋をするとまた同じことを繰り返してしまうのも人生……って感じもする……主人公に幸あれ…………。

歌唱表現その他のこと

さこちゃんフィーチャー曲ということで、全体的に湿度高めの歌い方がディレクションされています。和田さんはこぶしでは5番手みたいな扱いをされることが多いですが、歌唱については非常にテクニカルだなと思います。たぶんこぶしで一番器用。

 

辛夷其ノ一でも思いましたが、和田桜子さんはアルバムで輝くメンバーですよね…。ディレクターの山尾氏に言われるようにしゃくりが得意ですが、それに加え声色の幅も広く、感情を技術としてアウトぷっとするのも上手。

 

「アンラッキーの事情」では最後の「断ち切って」に「泣き」の響きが使われています。和田桜子さん自身は普段ロックを聴いているようですが、おっとり見えて実はかなり情緒が豊かなんだなと伺えます。

 

また、本楽曲でカギとなるのは「断ち切って」というフレーズです。1番は野村みな美ちゃん、2番は広瀬彩海さん、最後はさこちゃんが担当していますが、まさに三者三様でとても聴きごたえがあります。1番ののむちゃんはこれまでの流れなんて全然関係ありません!!!!って感じの「たぁつィきいいいってええええ!」で、これは主人公の言葉というよりは、周囲の声のように聴こえます。

 

2番のあやぱんの「断ち切って」は主人公自身の決意のように思われます。ちょっぴり未練もありつつ前を向かなきゃという感じ。最後のさこちゃん「断ち切って」は、「泣き」の響きとしゃくりの効果でとてもドラマチック。そのあとの「光へと」は正直蛇足感が否めませんが(個人の感想です)、悲しみを受け入れつつ新たな自分へ一歩踏み出したい強さも感じられるいい終わりだな~と思います。

 

他ももちろんいいパートがたくさんあったので、例のごとく箇条書きします。

井上玲音ちゃんの英語っぽく聴こえる「過去の影を追えば」

浜浦彩乃ちゃんの「時の針は重く 鉛を飲み込んだよう」「上手く笑えない」

本人はぜったい上手く笑えないときなんてなさそうなのにしっかり上手く笑えない子になれてるところがすごい

・ユニゾン「哀しみスバイラル」で聴こえるあやぱんの音の処理

失恋ソングでしっとり聴かせるだけではなく、テクニカルにも魅せることができるこぶしちゃんたち本当に凄い!メンバーが大人になるにつれてこういう曲もふえていくのかな……。

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