浮き足立てる三月
最近会った人には話したけど、三月が好きだ。
正確には卒業式や修了式が終わってから入学式、始業式が来るまでの期間。
三寒四温の季節、暖かい日が増えてきて外にも出やすくなり(花粉は辛いが)、スキップしたくなるような。
かと思いきや突然真冬のように寒い日が来て現実に引き戻される。
高校生でも大学生でもない、学生でも社会人でもない、一年生でも二年生でもないあの感じ。
所在不明な存在が街に溢れていて、大いなる期待と不安で満ちている空気。
自分はこれまで通り同じ電車に乗って同じ会社に向かうのだが、"何者でもないひとたち"を見るとまるで自分もその仲間であるかのように錯覚してしまうのである。
何者でもないというのは同時に何者にもなれるということで、ふわふわした雰囲気の中に確かな希望を感じる。
浮き足立った空気に思わず自分もなんでもできそうな気さえしてくる。
今日は海に行ってみようとか、気になってたけど勇気が出なくて行けなかった店に入ってみようとか、大きなことから些細なことまで。
実際に実行できたのは後者だけだが。
今夜ベッドに入って目が覚めたら、いつも通りの一日が始まる。
いつも通りベッドから出て歯を磨き、着替えてメイクして髪を整え、いつも通りの時間に電車に乗る。いつも通りを積み重ねる平日。
浮き足立てる三月はあと数十分で終わるのだ。