尾形春水さんの卒業にあてて
2018年6月20日、モーニング娘。‘18 12期メンバー尾形春水さんが同グループ及びハロー!プロジェクトを卒業する。
お世辞にも一般に知られているとは言えないメンバーであるが、私にとっては唯一無二の存在である尾形春水さん。
尾形春水さんがどんなアイドルであるか、どこが好きなのかを卒業前にまとめておきたいと思う。
尾形さんを好きになったきっかけ
尾形春水さんがモーニング娘。に加入したのは、2014年9月30日。日本武道館で行われた『モーニング娘。‘14コンサートツアー秋 GIVE ME MORE LOVE~道重さゆみ卒業スペシャル~』でお披露目された。
12期メンバーは「モーニング娘。‘14<黄金(ゴールデン)>オーディション!」の合格者2人と2人の研修生昇格組で構成されている。
このオーディションは後にアンジュルムに加入する上國料萌衣さんや元カントリー・ガールズの島村嬉唄さん、カントリー・ガールズの小関舞さん、つばきファクトリーの浅倉樹々さん、谷本安美さん、小野田紗栞さんなどが合宿審査に進出したオーディションで、かなりの激戦だったと言われている。
そんな中オーディションを勝ち抜いた尾形春水さん。
初めてオーディションの様子を見た時は「なぜこの子!?」と正直思ってしまった。
尾形春水さんは歌・ダンス未経験。9年間フィギュアスケートを習っていたことからダンスはついていけそうか?という雰囲気もあったが、それにしても同じオーディションを受けていたメンバーのレベルが高かったこともあり、「なぜ」という空気が否めなかった。
それに対して同じくオーディション合格者である野中美希さんはダンス経験あり、ピアノも弾けて歌もそこそこ、さらには帰国子女で英語も話せるという期待大のメンバー。
さらには研修生昇格組の牧野真莉愛さん(ハロプロ研修生花の17期)は当時の研修生の中でも人気メンバーで、羽賀朱音さんはハロプロ研修生黄金世代とも呼ばれる20期メンバー。
みんな期待されて加入した中、尾形春水さんは少し謎なメンバーであったような印象がある。
私個人の感想としてはお披露目された時、オーディション組の2人はなんかパッとしない子たちだなあというのが正直な印象だった。
12期メンバーはモーニング娘。‘15から本格的な活動を開始。
それからも道重さゆみが卒業して若いメンバーのみになったモーニング娘。にそこまでの熱量を持てなかった私は、スマイレージ(ここ大事)3期の室田瑞樹ちゃんにハマりながら最高のつんく♂ファンである福田花音さんが卒業するアンジュルムを応援し、モーニング娘。‘15のことは遠目に見ていた。
(道重卒後、鞘師がメディアに取り上げられるたびに「ストイック」「厳しい」というイメージばかり強調されて可哀そうに思ってしまったこともある。)
それが一変、「この子良い!」と思ったのがモーニング娘。‘16の頃。モーニング娘。62枚目のシングル「セクシーキャットの演説/ムキダシで向き合って/そうじゃない」である。
「セクシーキャットの演説」のMVを見た時、「なんだこの美少女は!!!!」と衝撃を受けた。
黒の衣装が映える真っ白な肌にまとめ髪で強調された美しい輪郭。日本人離れしたミステリアスな顔立ち。尾形春水さんのビジュアルに惹かれてしまったのである。
それからモーニング娘。‘15「ENDLESS SKY」のMVを見てその美しさを再確認し、ブログやラジオもチェックするようになった。
それまで「可愛いのは当たり前。歌えて踊れるアイドルじゃないと推せない!」と思っていた亀井絵里・前田憂佳の亡霊オタクの信念は尾形春水さんのビジュアルの前にガラガラと音を立てて崩れ落ちたのである。
尾形さんの人柄が好き
尾形春水さんは加入して2年経ってもやっぱり歌はへっぽこ。ダンスはついていけているが場位置は端がほとんどだった。
それでも尾形春水さんは持ち前の賢さを武器にMCやラジオで活躍していた(と信じたい)し、特技である画像編集を活かして写真に写り込んだ一般人を違和感なく消してブログにアップするたびに「凄すぎる」とファンをざわつかせた。
尾形春水さんは努力を人に見せないタイプであった。
歌・ダンス共に未経験で年々レベルが上がっていくフォーメーションダンス、ありすぎるほどの楽曲をこなしていくのは相当大変なことだったであろう。
モーニング娘。OGは「モーニング娘。は後から加入する子ほど大変」とよく語る。
1年中行われるコンサート、CD発売の度に開催される握手会。
その他にもたくさんの仕事がある中でレッスンもこなしていくのは10代の女の子にとってどれだけ大変なことだったのか。
しかし尾形春水さんはブログなどファンに見えるところで大変だというところはほとんど見せていない。
つい最近行われたソロでの全国握手会で交通トラブルが起こった時にも「自由時間が増えたと思った」と語るほどポジティブな性格も理由の一つであろう。
しかし「鞘師さんに憧れました」と言っていたわりにメンバーになってからあまり鞘師さんにくっついているところを見せなかったことのように、彼女なりにアイドルとしての信念があったのではないかと思う。
妖精のように繊細な容姿とは裏腹に、尾形春水さんはとても頑固な性格である。
尾形春水さんは2015年~2016年上半期あたりに激痩せしたことがファンの間で心配されていた。
それまで「ママが手作りにこだわる人で冷凍食品を全然食べられなかった(本人談)」ほど大切に育てられてきた人である。
急激な環境の変化や不規則なスケジュール、食事の変化に身体がついていかないのは当然とも言えるだろう。
それでも尾形春水さんはファンの見えるところで弱音を吐くことは無かった。
加入後は12期全体として特別フィーチャーされることがなくても、2017年に加入した13期メンバーが自分たちではありえなかったほどに推されても、芸能活動の裏で取り組んだ大学受験に落ちても笑顔を絶やすことのなかった尾形さん。
なんて凄い人なんだろう。
卒業理由は短大進学であるが、もともと大学受験も周りに反対されていたという。
しかし「両親との約束だから春水は絶対受験する!」と決めて2年間モーニング娘。の活動と勉強を両立させ、見事大学合格を決めたのは本当に凄いとしか言えない。(塾にも通っていたなんて凄すぎる)
尾形春水さんとパフォーマンス
尾形春水さんの努力がパフォーマンス面で実ってきたのは2017年あたりのように思われる。
2017年と言えば、13期メンバーの加入と尾形・羽賀ファンにとっては衝撃のハロ!ステダンスレッスン映像から始まった。
後者に関してはハロステを毎回少なくとも二度は見る自分がもう二度と見たくないサムネも見たくないと思うほど良くない思い出なので詳しくは割愛するが、これらのことが刺激になったと尾形さんと羽賀さんはインタビューで語っている。
確かにそれまでは一番後輩として先輩についていっていた12期にとっては後輩が加入してくることと自分たちではありえなかったほど推されていたことはかなりの焦りになったのだろう。
尾形さんと羽賀さんにとっては、同期である野中さんと牧野さんは既にセンターを経験しているのに……。という気持ちもあっただろう。
その頃は辛かったと卒業を目前にして明かされたが、そう思うのも当然。むしろその辛さをファンの前ではほとんど見せなかった根性が素晴らしいと思う。
尾形さんの努力の形は2017年の夏頃、まずダンスで私の目に入ってきた。
初めはライブ新曲として発表された「青春 Say A-Ha」間奏のダンス。今まで端にいることが多かった尾形さんがセンターすぐ横で踊っていた。
センターは「ダンスマシーン」と評される石田亜佑美さん、そしていわゆる「シンメ」と言われる位置には手脚が長くダンス映えする13期の加賀楓さん。
尾形オタクは大歓喜だった。その後多少の位置変更があっても尾形さんの位置は変わらず、シンメの位置には9期の生田さん。オタクは涙がちょちょぎれたよ。
歌も少しずつ上達し、レコーディング映像には「はーちん歌えてるじゃん」のようなコメントも多く見られるようになった。
個人の見解として、尾形さんは一つの曲に対してゆっくり歌い込んでいくタイプのように思われる。
だからレコーディングはあまり得意でないように見られても、コンサートで聞くとちゃんと歌えている。
そして、尾形春水さんはその声がモーニング娘。というグループでの武器の一つだと思う。
今のモーニング娘。メンバーは声が低め、もしくは尖った声が多い。
そんな中尾形春水さんの歌声はとても柔らかく、どのメンバーと併せても喧嘩することが無い。
ソロで歌わせるにはやや説得力に欠けるが、ユニゾンを作る上で非常に重要な声なのではないだろうか。
現に12期メンバーのユニゾンはとても綺麗だと言われることが多い。
時に鞘師さんに似ている野中さんのやや尖った声、力んでしまうことも多い真莉愛さんの声を柔らかく明るい尾形さんの声と太さと安定感のある羽賀さんの声で包む。
本当に絶妙なバランスだと思うのだ。
尾形さんの“声”の魅力
尾形さんの柔らかい声は、トークにおいてもその魅力の一つとなっていた。
尾形さんが使う関西弁は、時としてキツい印象を与えてしまうこともある方言である。
しかし尾形さんが話すとなぜかいつもほんわかとして柔らかい。
尾形さんの出身が京都よりの大阪ということも理由の一つであろうが、やはり声が一番の理由だと私には感じられる。
飯窪さんをキツめにいじっても、DVDマガジンのブーブークッションドッキリで素直にしゃべりすぎて(ピー音で隠されて)もアイドルらしさを失わないのはその声が理由なのではないか。
持ち前の賢さと柔らかな声で何をしても、何を話しても嫌味の無い尾形さん。
初めはビジュアルから入った私だが、今では尾形さんの声が彼女を好きな一番の理由である。
尾形春水は新たなモーニング娘。メンバーの形
尾形さんは握手会が好きだと語る。
握手会が苦手だと公言するメンバーもちらほらいる中、握手会が好きと自分から言うメンバーは極めて珍しいように思われる。
握手会対応の良さがテレビ番組でも取り上げられた尾形さん。
スキル重視の風潮が続く中、「春水は歌とダンスが苦手やからMCで頑張る」とも言っていた。
頭の回転が速く記憶力も良い尾形さんが輝ける場所は握手会とMCだったのだろう。
そんな尾形さんはあくまでもパフォーマンスが本業であるモーニング娘。においてはそういった意味で新しいメンバーだと考える。
それまではダンスが苦手なメンバーが悪目立ちしないようにとのことでつんく♂が考えたフォーメーションダンスは一方で個性を殺すパフォーマンスだと言えるかもしれない。
しかしフォーメーションダンスが完成した(と私は思う)‘14から新たなグループの形の模索を始めた’15。
12期に選ばれたメンバーを見ると、次の時代はメンバーの個性を重視したいという流れになったのではないかと思う。
実際、現在一番人気と言われているメンバーの佐藤優樹さんは‘15くらいからメキメキとパフォーマンス力を上げ、その個性あふれる表現で多くの新規ファンを獲得した。
少なくとも私にとって尾形春水さんというアイドルは、モーニング娘。新たな時代を切り拓くメンバーの一人である。
尾形春水と牧野真莉愛
アイドルという視点で尾形春水さんを語る上で、同期メンバーの牧野真莉愛さんという存在は外してはならないと思う。
尾形さんと実際に仲が良かったメンバーといえば野中さん、羽賀さんだが、私はお世辞にも仲良しとは言えない牧野真莉愛さんと尾形春水さんの関係にアイドルとしての魅力を感じている。
牧野真莉愛さんは言うまでもなくモーニング娘。の人気メンバー。
研修生時代から人気が高く、「娘。入り確実」と囁かれている中本当に加入してきた期待大のメンバーであった。
そんな牧野さんと尾形さんは性格が正反対だとお互いに語る。
とにかく真面目・純真・一生懸命・ちょっぴり抜けている牧野さんと真面目で賢いが面倒くさがりでやや捻くれたところもある尾形さん。
初めはあまり話さなかったというのも当然である。
しかし2人での仕事も多かったのも事実。
性格だけではなく見た目もアイドルとしての魅力も正反対な「はるまき」コンビはお互いを引き立て合う最高の組み合わせだと事務所も思っていたのではないだろうか。
幼い頃からハロプロ研修生として活動していた牧野さんと、オーディションを受けられるぎりぎりの年齢である高校生で一般加入した尾形さん。
台湾系っぽいアジアン美少女の牧野さんとヨーロッパ系の雰囲気がある顔立ちの美少女尾形さん。
健康的で圧倒的な「陽」のイメージを持つイメージを持つ牧野さんと無機質でどこかもの憂げな「陰」のイメージを持つ尾形さん。
その他にも牧野さんが動画で見るのが一番可愛い「動」のイメージを持つのに対して、尾形さんは抜群に写真映えする「静」の魅力を持っていた。
一番に注目すべきは個性の種類の違いである。
牧野さんは「そうじゃない」でも見られたように、センターに置くと「牧野真莉愛」という個性が前面に出るタイプ。
しかし尾形さんは反対にその無機質な美しさから、「セクシーキャットの演説」のように現実離れした世界観でもすっと溶け込んでいけるタイプであると思う。
こんなにも正反対の魅力を持つ2人なのだから、本人たちの仲が特別良くなくても事務所の大人たちが2人での仕事を増やしたのも頷ける。
感情をとても素直に表し、すぐ泣いてしまう牧野さんと滅多なことでは涙を流さない尾形さん……なんて楽しみもあった。(私ははーちんのドライさが好き)
こんなにも魅力的な「はるまき」コンビのこの先を見ることが出来なくなるのは本当にもったいないし寂しい。
だって小田さくらリーダーの下はるまきコンビがビジュアル無双をするのを夢見ていたから……。
とはいえ卒業が決まっていることは変えられないことなので、これからは12期みんなの成長を見守っていきたいと思う。
Are you Happy?/A gonnaが表すもの
尾形さんの卒業シングルは2018年6月13日に発売された両Aメンシングル「Are you Happy?/A gonna」である。
この2曲はどちらもつんく♂作詞作曲。挑戦的な曲の作りと今までに無かった振り付けが良くも悪くもハロプロファンの関心を呼んでいると感じる。
2曲とも強烈な印象であるため、「はーちんこれで卒業するの?ヤバすぎる」という声も多い。
A gonnaに関してはレコーディングが尾形さんの卒業が決まる前だったそうで、尾形さんは発表から卒業までの期間が極端に短かったことから、つんく♂も事務所も今回の2曲は特別尾形さんに向けたものと想定していないのではと思われる。
私にとっては、推しの卒業ソングが欲しいという気持ちはファンである限り持っているが、今回に関しては仕方ないという気持ちの方が先立つ。
むしろ、卒業曲として作っていないのに12期をフィーチャーしてくれてありがとう、12期よくやったと言いたい。
モーニング娘。'18『A gonna』(Morning Musume。'18[A gonna])(Promotion Edit)
そんな2曲であるが、尾形さんはA gonnaを聞いて「自分の気持ちが見透かされている」ように感じたそう。
特に
したいことは
自分しかわからん
という歌詞が卒業決定の後押しをしてくれたそう。
「えーがな」と関西弁がタイトルになっているところは、モーニング娘。歴代唯一の大阪出身メンバー尾形春水さんを想起させるものでもある。
このような意味でA gonnaは尾形春水さんの曲で(も)あると言っていいのではないだろうか。
今回のシングルのメインはAre you Happy?の方であるようだが、この一曲は2017年あたりから特徴的なつんく♂の「めんどくさい女子」シリーズの集大成になりそうだ。
つんく♂は「ジェラシー ジェラシー」あたりから、「周りが気になる、個性を出したい、愛が欲しい、私だけを見て欲しい」女子を続けてテーマにしている。
このテーマについては今後他グループ提供曲なども見て一度考えたいので今回は詳しくは取り扱わないが、果たしてこれは尾形さんにも当てはまるテーマなのか。
私の結論としてはYESである。
尾形さんは面倒くさがりだが、その実ブログではかまってちゃんともとれる内容が多かった。
メイクにこだわりが無い一方で一時期はアイプチをしている時期もあったし、基本的に自撮りは加工しているなと思う(それが悪いとは思わない)。
そしてそれぞれの個性が豊かな12期の中で一人だけ「魅力を出し切れない」と悩むことも多かったそうだ。
この歌詞に関してはOK出した大人を許していないぞコンプライアンスどうなってんだ。
頓着無いように見せて自信が無く、一人で抱え込んで悩んでしまう。それが尾形春水さんの性格であるように思われる。
だから
自信もないけど 私
幸せになりたい
し、
努力してるでしょ? 私
幸せになりたい
のだと思うのである。
卒業シングル以外でも宛書の多いつんく♂の今のミューズは佐藤優樹さんであるように見られるが、今のモーニング娘。にはめんどくさい女子代表の佐藤さん以外にもそれに当てはまるメンバーが実は多いのではないか。
尾形春水さんも違わずそんな「めんどくさい女子」の一面を持っていたのだろう。
終わりに
ここまでつらつらと推しの尾形春水さんについて思うことを書いてきたが、尾形春水さんのアイドル人生は2018年6月20日の武道館公演で幕を閉じる。
同い年のスーパースター鞘師里保さんに憧れてモーニング娘。になった彼女が憧れる先輩の卒業後、自分の道を見つけていく姿を少しでも目に出来たことは本当にありがたいことだった。
元々勉強ができる尾形さんはモーニング娘。卒業後また勉学の道、いわゆる「普通の女の子」の人生に戻っていくが、「将来は裏方につきたい」と語ってくれたことが素直に嬉しい。
「自分は人の注目を集める場が好きなんだ」と思ってモーニング娘。オーディションに応募した女の子が、アイドル活動を通して舞台を支える裏方に興味を持ち、勉強したいとまで思ったこと。ファンとして寂しい気持ちもあるが、応援したいとも思うのだ。
尾形春水さんに出会えて、小さい頃から好きだったモーニング娘。のことをまた心から好きになれて良かった。
今日だけは寂しいと思わせてね、はーちん。